空は青く澄み渡り、雲ひとつない。
暑くもなく、寒くもない。過ごしやすい適度な気温が、心地よい。
隣をそっと盗み見て、ちょっと後悔した。
何でって?それは・・・・
「どうしたんだ?」
花がほころんだような、って表現するのがぴったりな悠先輩の笑い方。
元々端整な顔立ちだから、控えめな笑い方がすごく絵になる。
先輩ならどんな表情も見たいって思うけど、やっぱり笑顔が一番好き。
でも見たくないとも思う。だって、心臓がバクバク鳴って苦しんだもの!
「い、いえ!天気がよくて気持ちいなあって!」
「そうだな」
目を伏せて笑う悠先輩・・・・んもう、かっこよすぎます!
私は先輩の彼女っていうポディションに納まってて、悠先輩もすっごく私を大事にしてくれる。
先輩の周りにはクラスメイトの先輩方を始め、りせや直斗、はたまた人妻さんやナースさん等・・・
上げればキリがない程、知り合いの女の人がたくさんいる。
特に天城先輩や里中先輩とは、すごく親密なのにお二方でもない、私を選んでくれた。
始めは先輩の隣に立つに、勇気というか・・・申し訳ないって気持ちで一杯だったけど。
悠先輩の一言で、全てが変わった。
「だけなんだぞ?俺の特別は」
あのクールな先輩が、顔を真っ赤にして照れながら言ってくれたことが、すごくすごく嬉しくて。
不安なのは私だけじゃなかったんだって、安心もしちゃって泣いて先輩を困らせたけど。
「それより、?」
「はい、何ですか先輩」
首を傾げると、先輩は途端に不機嫌な顔をし、私の頬を引っ張った。
「それ、やめろよ?」
「にゃにがれふか?」
「敬語と、先輩って呼び方。せめて2人きりの時だけでも、やめるって約束だろ?」
本当は2人きりじゃなくても、そう接して欲しいらしいけど・・・ここは私が譲れなかった。
けじめつけたいっていうか・・・・あんまり気にしないほうがいいのかもしれないけど、でも一応。
だから2人きりになったときでも、そのまま敬語で先輩をつけてしまうというか。
悪気はないんだけど、ね?
「分かったか?」
「ひゃい・・・・うん」
「よし」
頬を引っ張られていたけど、全然強くされてなかったから痛くも無いし、赤くもなってない。
甘やかしすぎでしょ。そうつっこみを口に出来ないのは、嬉しいからで。
なんて思っていると、きゅっと手が握られた。とても自然に、当たり前のように。
はっとして顔を上げると、悠はクスクスと笑みを零していて。
「顔、真っ赤」
「べ、別に赤くなってなんか・・・・・・なくないよね」
「俺の視覚情報が正しければ」
早く慣れろよ?って言われても、悠が格好よすぎるのがいけないんだよ!
そう伝えると、今度は悠の顔が真っ赤に染まった。
ポカンとする私に、片手で顔を押さえながら見るなよ、とふてくされた声で言った。
その様子が意外で、可愛くて。思わず笑みを零すと、ふてくされた顔もいつの間にか、笑顔に変わって。
こんな何気ないことが幸せだって、実感できることが、悠と共有できることがとても嬉しくて。
「鮫川沿い散歩しようよ?」
「そんなんでいいのか?」
「うん、悠といられればどこでも」
て言ったら頭にチョップ落とされた・・・あ。また顔真っ赤。
悠は自分で恥ずかしいこと沢山言うけど、言われ慣れてないのかすぐに照れる。
可愛いな、と口には出さずに心の中で零すと同時に、鳴上ー!ー!と声がして。
振り返ると、花村先輩を始めいつものメンバーがそこにいて。
女子メンバーが大手を振っている彼を、押さえ込んで里中先輩とりせちーが両手をあわせてる。
2人きりにできなくて、というか気を使えなくてごめんなさい、ってことなんだろう。
みんな、優しいな・・・・ちょっと切なくなった心を押さえ込んで、悠を見上げた。
「ね、行こう?」
「もちろん」
悠と手は離さず、繋いだまま手を引っ張ると彼は慌てたように、繋いだままでいいのか?なんて聞くから。
いつもはというか、今まではメンバーの前で彼氏、彼女をしていなかったけど、これからは。
「うん、繋いだままがいいな」
悠が安心したように、嬉しそうに笑った。
悠が寂しくないように、ちゃんと彼の彼女だと胸をはれるように。
だって私は、悠が大好きだから。
Lovers Beginner
(2012.03.02 Thank you for 10000hit!!)