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俺だけの可愛いお姫さま

(花村陽介の場合)





「今日も、バイト?」
「おう!って、いつもごめんな、

は屈託のない笑顔を見せ、首を振った。
物分りの良すぎる彼女に、少し寂しさを覚えるが、それをさせている原因は自分にあって。
そんな感情を抱くのはお門違いだと言い聞かせ、携帯に目を落とした。
学校を離れないと、遅刻してしまう時刻を指していて。
微かにため息をついて、に夜電話すると告げ、踵を返した。


いつものように至る場所でコキ使われ、ヘトヘトになって終了。
まだ残る社員にお疲れ様でした!と挨拶し、素早く着替え、裏口へ。
理由は簡単。1秒でも早くの可愛らしい声が聞きたいから。
ガタガタに曲がったフレームの自転車を押しつつ、携帯を操作しながら通用門を抜けた時だった。


「陽介?」

耳に馴染んだ可愛らしい声に、勢いよく顔を上げた。


「やっぱり、陽介だ」

昼間と同じように、屈託のない笑みを浮かべる彼女は、やっぱり可愛い。
ボンヤリと考え唐突に我に返った。だ、がいる。何で?疲れて幻覚見えてるんじゃない、よな?
立ち尽くす俺を見て、がクスクス笑みを零したところで、ようやく言葉を発することが出来た。


「な、何で?」
「陽介に会いたかったからだよ。ダメだった?」
「ダメっつうか・・・・」

むちゃくちゃ嬉しいですよ!馬車馬の如く働かされた俺には、いっちばんきく回復薬ですよ!

「うん。陽介も嬉しいし、私も会えて嬉しいから問題なしね」
「や、でもさ、夜遅いし最近物騒だし・・・・つか、よく出てこれたな?」

の家は厳しい。彼女一人でこんな時間に外出を許してくれるはずが・・・・まさか。
顔を引き攣らせた俺に、は真っ赤な舌をチロリと覗かせ、笑った。

「窓から出てきちゃった」
「ええ?!な、何やってんだよ、危ないだろ!」
「今回限りにするから、許してください」


悪びれなく両手を合わせて謝るに、もうどうでも良くなってしまって。
乱暴に頭を撫でると、ぐちゃぐちゃになった髪を梳かして、俺から距離をとる。
一々可愛いよな、と鳴上に言ったことがある。
端整な顔が台無しになるくらい、ノロケとうんざりしていたっけ。


しょうがないだろ、マジで可愛いんだから。
一応回りに人がいないことを確認して、の腕を引っ張る。
突然後ろから引っ張られたは、バランスを崩してたたらを踏んだ。

何か言おうとした口を、素早く塞ぐ。
チュというリップ音を立てて、離れる唇。
真っ赤になったが、とっても愛しくて。


「好きだ、
「わ・・・私も」

そうしてからのキス。
目が飛び出さんばかりに、見開く俺を見て、悪戯が成功した子どものように、がニンマリ笑った。