「夜の散歩も良いですね」
「そうだね〜寒いけど気分が良いや」

八十稲羽市の夜、私たちは少し外で散歩をしていた
今日一日ずっと足立さんの部屋にいたから
ちょっとだけ外に出ようということで暖かい格好をして夜道を歩いていた

冷たい風が私たちの体温を容赦なく奪ってくる
12月の冬の夜は寒い、白い息がくっきり目に見える
マフラーでもこの寒さはカバーできなかった

でも部屋に帰りたいとはあんまり思えない
だってこんなに静かな町並みを見たのは初めてだから

虫の鳴き声も耳に聞こえてくる

風流だった、心が洗われる気がした

空気も綺麗だし夜空だって星がくっきり見える

「わぁ〜星が綺麗!」
「うん・・さん寒いの平気?」
「はい!それよりも楽しいです!」

楽しそうにニコッと微笑むと足立さんは小さく笑ってくれた



キキキキキキィィィィッッ!!!



「!?」

「危ない!」


後ろから車が突進してきた
曲がり角だというのにブレーキもライトもつけていない

そのせいで私は反応が遅かった

けど足立さんが私の腕を引っ張って引き寄せてくれた

私の体は足立さんの胸に向かってブツかった
逞しい腕と胸にうっとりしてしまった・・

でも足立さんは鍛えているわけじゃない

女性にはない男性特性の筋肉だろうか??
ドキドキしながら足立さんの服にしがみ付いた

服に染み込んでいる足立さんのニオイが私を包み込んできた


あっぶねーな!クソッタレが・・・・さん大丈夫?」

「・・・・・・・・ふぇ!?あ、大丈夫です!あははは・・・」


真っ赤な顔で私は足立さんから離れた
今更なのに・・・やること沢山やってるのに

でも気付いてしまった、そういえば足立さんは大人の男性なんだって・・

童顔で子供っぽいけど27歳の成人男性
大人の男性と私はあんなことや、こんなことをしていたんだ
抱かれてるときは気にしてなかった・・うきゃぁ〜!メチャクチャ意識してきた!

どうしよう、どうしよう!緊張してきた!!わぁぁああ〜〜!!

さん?」
「きゃぁ!なんです!?」
「いや・・・名前呼んだだけ」

な、なんだ・・ふぅ!ビックリした
名前を呼ばれるだけでも意識しちゃう

ドキドキと高鳴る胸を押さえながら私は目を閉じた

「本当に平気?危なかったからちょっと乱暴にしちゃったけど・・」
「ご、ごめんなさい大丈夫です」
「そんな風には見えないよ・・」

徐々に寂しそうな表情になる足立さん
どうしよう、そんな顔も出来るんだ・・・緊張する

緊張?

違うかもしれない、これは惚れ直したっていうんじゃないだろうか

へラッとしていて、男としては頼りない足立さん
でも彼は大人の男性・・・童顔でも成人男性
そして恋人が危険に陥ったら全力で助けてくれる
抱かれている間もずっと足立さんは好きって伝えてくれている

こんなに大切にされていたのに、あんまり気付いていなかったなんて

俯いていたら足立さんが私をギュッと抱きしめてきた

「あ、足立さん?」

「本当?本当に大丈夫なの?隠さないで僕にちゃんと伝えてよ・・・
 痛かったのなら怒ってよ・・・乱暴にやりすぎて怖かったのなら謝るから」

”嫌われたくない”

足立さんと喧嘩した時に彼はそう言っていた
だから謝るのはいつも足立さんだ

本当に大切にされている

とっても愛おしい

ナヨナヨしていて男らしい所なんて全くない
でもいざという時は体を張って守ってくれる・・
無意識に見せる男らしさがたまらなくカッコ良く感じる

そして私のことになると弱くなる

可愛い

怖がっている子供のように抱きついてくる足立さんの背中に手を回した

「ちょっとビックリしただけですよ・・・足立さんのことが嫌いになったわけじゃないです
 そんなこと一ミリも思ってません、だって私はこんなに足立さんが好きなんですから」

「ほ、本当?」

体を離すと私はニコッと微笑んで、キスをした

触れるだけのキス
お互いの白い息が交差する

「私を助けてくれたじゃないですか
 そんなあなたを嫌いになったりしませんよ」

フワッと頬に触れると、足立さんがもう一度抱きしめてきた

「僕・・・やっぱりさんじゃないと駄目みたい・・
 キミじゃないと嫌だ・・・好き・・・君が好きです」

「はい私も・・・大好きですよ」


体を離すともう一度キスを交わした


甘えん坊なあなた

でも時々カッコ良くて

頼りになる


そんなあなただから




好きなんです、よ?








透さん








おしまい