ごまかし続けてきた代償
ここ最近、ずっと嫌な予感がしていた。焦燥感に駆られていたと言った方がいいかもしれない。
「、送ってってやる。乗ってけよ」
ありがと、跡部!
背を向けているため分かりはしないが、アホ面とも言える笑顔を浮かべたが駆け寄ってくる。
誰にでも尻尾を振る犬っころのようなコイツ。
うっとおしいと思いつつ、無碍には出来ない。否、したくない。むしろ・・・・
「ありがと、跡部!でも今日は・・・」
「寄ってくとこでも「おまっとーさん」
「侑士!」
俺の声を遮って声をかけたのは、低い声の関西弁男。
しかも侑士って何だ?昨日まで苗字に敬称つけて呼んでなかったか?互いに・・・
呆けている俺を置いてと忍足は話を続けている。
それも、とても親しそうに、昨日の俺とのように。
黙り込んでいる跡部を不思議に思ったのか、忍足が声を掛ける。
「なんや、まだ残っとったんかな」
「それはこっちのセリフだ。おい、行くぞ!」
「跡部、そのことなんだけど・・・・今日は侑士が家まで送ってくれることになったの」
何だ、ソレ。声も出ない俺に忍足はトドメを刺す。
「今日だけやあらへん」
ああ、嫌な勘だけは昔から外れたことがねぇんだ。
「俺ら付き合ってんねん。」
「忍足!全国終わるまで、皆には内緒にしようって・・・!」
「侑士、そう呼んでって言うたやん?部長には報告しといた方がエエと思ってな」
頬を染めて恥ずかしそうにする。
そんな彼女の頭を愛しそうに撫で、俺に視線を寄越す忍足。
「・・・・ああ。ジローや向日には黙っとけ、うるせぇからな」
「そのつもりや。ああ、それからは毎日俺が送って帰るよって」
「侑士・・・」
こういう時、感情的になれたらどれだけ楽か。否、俺には一生縁のないことだな。
「大事にしてやれ。」
「は、はい!」
「忍足は狼になりやすいからな、気をつけろよ?」
「え、侑士狼になれるの・・・・?」
「(クスクス)まぁ、時と場合による、な?」
そして俺は2人に背を向けた。この俺様が、逃げるように。
胸を刺す痛みに気付かないフリをしながら・・・