ありったけの言葉でさえ
仁王雅治。立海大付属中のモテ男の1、2位を争うイイ男。
それが私の彼氏。付き合って1年。告白したのは私から。
チャラ男に見えるけど、実は硬派。浮気はしてない、今まで一度も。
優しいし、大事にしてくれるし、頭いいし、テニスすっごく上手だし、かっこいいし・・・・
超がつく程の完璧彼氏。だからこそ、いつでも不安になる。
「何をボーっとしとるんじゃ、」
あなたのことを考えていました。なんて言えるはずない。
「うーん、寝不足ぎみかな。ガラスの仮面にはまっちゃってさ」
「んー。あれは名作じゃけぇのぉ」
「え。雅治読んだの?」
「姉貴が持っちょる」
お姉さんの影響で読んだのか。にしても、雅治とガラスの仮面・・・・・似合わない!
ブハっと噴出すと、雅治は不機嫌そうな顔をし、失礼な奴じゃ。と呟いた後、ふっと笑った。
そういうのもさまになってる、というかかっこいい。
が見惚れていると、ポンポンと優しく頭を撫でられた。
「は笑っとるのがええ」
そうふわりと優しい眼差しを向けたら、どうしていいのか分からなくなる。
付き合い始めは、私に向いてるんだって思うと嬉しくて仕方なかったのに。
今じゃ、ギュッギュッと音を立てて心臓が締まってしまう。
苦笑いを見せると、何を思ったのか雅治は私の手をとり、自分の手と重ねた。
2回りも大きくて、ゴツゴツした私と違う男の子の手。
なのに、私より細くて白くて、綺麗な手。
何がしたいんだろう、そう思い雅治の横顔を見つめるけど、雅治は横を向いたままだった。
そのまま、雅治は一旦手を解き、握手のような繋ぎ方から、指と指を絡める所謂恋人繋ぎに変えた。
「好きじゃから一緒におるんよ」
ふいに泣きたくなった。