翌朝、登校するとがふてくされた顔で机に頬杖をついていた。
「朝っぱらから、なんて顔してんだよ?」
「陽介」
俺の質問に答えず、突然真剣な顔で見上げるから、何故かドギマギしてしまって視線を逸らした。
後ろめたいことなんてないけど、アイアンブルーの瞳にまっすぐ見つめられると威圧感が半端ない。
堂々としてろ、俺!と言い聞かせながら、なんだよ?と聞き返すと深いため息を漏らした後、あのさ、と口を開いた。
「男の人って、恋人出来たら恋人が最優先になるもんなの?」
「は?」
脈絡のない質問の意図が掴めなくて、間抜けな反応をすると、は質問が聞こえなかったとと判断し、ゆっくりと少し大きな声で同じ質問を繰り替えした。
そうじゃない、聞こえてるのは聞こえてる。いやいやいや、その前にどっから来たんだその質問?
ああ、そうか。海老原と鳴上付き合い始めたんだっけか?
昨日の朝、猫なで声で"悠"と呼んでいた彼女を思い返していると、どうなの?とが机から身を乗り出して聞いてくる。
うわ、むっちゃくちゃいい匂いするんですけど!何故かその匂いにドギマギしつつ、少しと距離を置きながら、無難な答えを返した。
「付き合いたてとかだったら、そうなるんじゃねーの?一番楽しい時期だっつーし。ま、人によるだろ?」
「そう・・・・だよね」
俺のテンプレ通りの解答に一応は満足したのか、風船がしぼんでいくみたいに大人しくなって、腰掛けた。
どうしたんだ?そう尋ねようとしたら、ドアから里中の姿が現れたのが見えたから、あいつにも聞いてみたら?そう勧めようとして、辞めた。
不機嫌そうな顔でこっちにツカツカと歩いてきていたから。
「ねぇ花村、男子って付き合い始めるとその相手しか見えないもん?」
開口一番、と同じような質問をぶつけてきた。何だよお前まで。え?鳴上が海老原に連れてかれた?
は呆れたようにため息をついているし、里中はブツブツ言い出しそうだし・・・何この状況。
「モロキンに見つかるのが一番いいんだけどな・・・今日辺り見つからないかな」
「そうだね。一回ネチネチされた方がいいよ!」
「むしろ、菜々子ちゃんに見せたほうがいいかな」
鳴上、お前すっげー愛されてんぞ。でも全然羨ましくねぇよ、だってむちゃくちゃ怖ぇもん。
女子2人が不機嫌なまま、1日が過ぎいつものごとくSHR前に姿を現した悠だったが、顔がむちゃくちゃ疲れている。
彼曰く、モロキンにたっぷり絞られたらしい。
自業自得だと、心の中で舌を出していると、同じく微妙な顔をしていた千枝ちゃんが、事件の整理をしようと言い出した。
「ジュネスのフードコートに集合な」
「ああ、そうだな」
悠が項垂れたように返事した瞬間、悲壮な音楽・・・確か、サラサーテのツィゴイネルワイゼン。
映画とかCMとかでよく耳にするアレ。悠がその着信音に震えだす。
「でないのか?」
陽介の怪訝な顔に気づかないまま、携帯を広げ耳に押し当て、5秒で通話を切った。
そして携帯は見たくないとばかりに、ポケットに押し込む。何その素早さ。
何だったの?と訊いた陽介に、曖昧な返事をしながらはた、と動きを止め立ち上がるとまた携帯を開いて耳に押し当てた。
教室を出ようと引き戸に手を当て、滑っていた・・・・・・・何、アレ。
「えーっと・・・・ジュネス、私達だけで行こうか」
そのまま姿を消してしまった悠を放って、3人でフードコートに。
土曜日ということもあり、親子連れが結構多い。
遊具ではしゃぐ小さな子を見守る親。微笑ましいなと、その光景を見ていると、千枝ちゃんの全然よくない!という言葉に現実に引き戻された。
どうやら、彼女は悠と海老原さんの付き合いに問題あると怒っているらしい。
確かにここ数日、悠らしくない。いくらフリといっても、限度ってものがあると思うんだけど・・・・あのお人良しめ。
ちゃんもそう思うでしょ?!と話を振られ、え?と顔を上げる。
すっかり般若、もとい鬼の角でも見えそうなくらいの怒りっぷりに、先ほどの話題が継続中だと分かり、とりあえず頷いておく。
「今日も事件よりデート優先なんて・・・信じらんない!」
「何怒ってんだよ里中・・・・さては、お前」
あ゛?とストローから口を離し、陽介を睨む千枝ちゃんとその視線をもろともせずに、うんうん!と嬉しそうに頷く彼。
いい男でペルソナもいっぱい使えるもんなあ!と終始笑顔で。
「いいから、いいから!泥舟に乗ったつもりで、任せとけって!」
泥舟じゃ即沈没だよ。
ツッコム気にもなれず、何か勘違いして楽しそうな陽介、終始不機嫌な千枝ちゃんを交互に見やり、一人ひっそりため息をついた。
ややこしいことに、ならなきゃいいけど。
でも、そういうことを考えてるときに限って予感が的中する。
週明けの火曜日、悠の部活終わりを待つため図書館に行こうとしたら。
「今からバスケ部見に行くんだけど、一緒に行かねぇ?」
陽介の後ろには千枝ちゃんもいて。おかしいな、と思いながら陽介に着いて行ったのが間違いだった。
ミーティング中の体育館に割って入り、悠の気だるげな何しに来たんだという声に、里中がマネージャーやりたいって。と言い出した。
そして指名された本人はええ?!と驚いている・・・・・陽介はよからぬことを考えているらしい。
悠の視線が、痛い。どういうことだと口ほどにものを言っている。けど私は関わり合いないことだし、全然知らない。
私のせいじゃないと、首を振っているとキャプテンらしき男の子が、ちょうど試合もあるし大歓迎!と喜んでいる。
にしても、やけに嬉しそうだなとふと視線を逸らすと、その後ろにいた女子生徒、海老原さんがじっと千枝ちゃんを睨み始めた。
なるほど。海老原さんの態度で納得した。
彼女が好きなのはキャプテンらしき男の子で、その子が好きなのは千枝ちゃん。そういう一連の繋がりらしい。
そして陽介は何を勘違いしたのか、千枝ちゃんが悠を好きだと思っているようで。
千枝ちゃんの好きは、友だちの好きだと思うんだけどな。と今更陽介に言えるわけなく、目の前で繰り広げられる陽介の言うところの、恋の全面戦争を見て無意識にため息がでた。
「お前は何がしたいんだ」
ニシシシと笑っている陽介に呆れかえる悠。まったく同感だと、頷いているとそのキャプテンの男の子の視線が私に移った。
「鳴上の妹、だよな?」
訊かれたらイエスと答えるしかない。海老原さんの視線が怖いけど、無視するのもおかしな話だし。
むしろ悠がお世話になってるなら、ちゃんと挨拶しておくべきだと、名を名乗りお世話になっていますと頭を下げる。
一瞬沈黙が降りたと思ったら、次の瞬間には笑われていた、陽介も含めて。
「母親かよ?!」
「10分遅く生まれた、妹ですけど」
「そういう変なとこまでそっくりなんだな、お前らって!」
「「変じゃない」」
思わず口をついた言葉がシンクロするのはよくあることで、というより咄嗟に出る言葉がシンクロするのは日常茶飯事だ。
からかわれたりすると、余計に面白ろがらせてしまうのもよくあったことだから、対処法も心得ている。
それに従って放っておくと、落ち着きを取り戻した一人が、口を開いた。
「鳴上にお世話になってんのは、俺の方。ああっと、俺一条康。よろしくな」
「ビシビシ鍛えてやってね。バスケって協調性も求められるでしょ?悠には皆無だから、他の人より厳しく」
「誰が、皆無だ」
真横で悠の声がしたと思ったら、グリグリと頭を押さえられた。
やめて縮む!と腕をどかそうと躍起になっていたら、陽介が助けてくれた。
「お前も余計なこと言うなよ?」
「だってほんと「それが"余計"だっての!」
またケンカになる前に、陽介に引き離された。もしかしなくとも、助けてくれたらしい。
そんな私達を見ていた悠がふーんと上から目線のような相槌をうち、更に陽介に視線をやり、私を見た。
「自分のことにも鋭くなれよ」
「ち、違うかんな!何考えてんだよ」
ため息混じりに言った悠に真っ先に反応したのは、陽介で。
少し顔を赤らめて反論してるが、悠はまったくといって言い程相手にせずあしらっている。
とりあえずバカにされているなとは思うけど、なんで陽介も一緒に怒るのかが分からない。
ただ一つだけ分かるのは、"しばらくややこしくなりそう"ってこと。
人知れずため息をついていると、陽介が応援行こうぜ!と能天気に笑っていて。
ため息をつくたび幸せが逃げる、というジンクスが脳裏を過ぎったものの、意図せずため息が漏れた。
試合当日、場所は八高の体育館。いつも通りに通学し悠はバスケ部の皆と合流、私は陽介と合流するはずだったんだけど。
「お願い!本当、メンバー足んなくて困ってんだ!」
ドタキャンを連発した部員達のお陰で、最低必要人数の5人に達しなかったらしく、陽介が体育館に入るや否や拝み倒す一条君。
花村さえはいってくれれば、試合できるんだ!と目を輝かせる彼に、困った人を放っておけない陽介はイエスというしかなく。
「頑張れ。応援してるから」
「お、おう・・・・!」
少しやる気になったらしい陽介を見送り、私は一人二階席へ。
千枝ちゃんも一条君もベンチで見ていればいい、と言ってくれたけど、試合の邪魔になるからと丁重にお断りした・・・・のは建前で。
本当は、彼女達の雰囲気が余りにも悪すぎて、居心地が悪いから。
長いすの両端に、ちょこんと腰掛ける千枝ちゃんと海老原さんを見やり、心底あの場所にいなくて良かったと、胸を撫で下ろした。
試合開始のホイッスルが鳴り、ジャンプボールから始まったものの、明らかに劣勢だった。
基本的なルールを知っているくらいで、詳しくないけど、その素人目から見ても劣勢と分かるのだから、よっぽどかもしれない。
相手のチームの方がよく動いていて、まだまだ疲れを見せていないのに、八高側に疲れが見えてるって・・・どういうことよ。
第一クオーターから、あっという間に第二クオーターまで終了して、10分のハーフタイムに突入。
一応励ました方がいいかと思って、階下に向かうと、必死の形相で千枝ちゃんが私の腕を引っ張った。
力の強さに、若干引いていると、お願い一緒にいて!と声を潜めて、かつ絶対に離さないと言わんばかりに引っ張られれば、逃げられず。
後半戦は一緒にいることを約束すると、タイミングよく千枝ちゃんが一条君に呼ばれ、かけていく。
ビデオカメラを挟んで、何か喋っているのを海老原さんが、般若も真っ白の三白眼で彼らを睨んでいて。
「青春、だよなあ」
と満足げに頷く陽介の隣で、女ってコワイ、と漏らした悠にその通りだと、何度も頷く。
これじゃ本当に泥舟、じゃないか。陽介の口ぶりからしたら、間違ってはないんだけど。
どうしてそのとばっちりが、私にまで及ぶのか・・・・・2人が座っている長いすを見やり、顔を逸らしてふっと息をつくと。
「ダメだからな」
悠が真剣な顔で言うものだから、帰るという選択肢も消えてしまった。
流石というより、恐るべし双子の第六感。妙に納得していると、試合開始のブザーが鳴った。
それを聞いて露骨に嫌がる陽介と、もう少しだからと励ましつつ手をひく悠。
苦笑いを浮かべる片割れを見るのは、何も珍しいことじゃない、日常茶飯事ともいえるけど・・・・全然嫌がってない。
今まで誰かと一線を置くようにしてきた私たちは、誰かに対してよそよそしいところがあった。
指摘する人はいなかったし、彼らも始めは気づいていなかったけど、多分本人も気づいてない。
世話を焼くのが処世術ではなく"そうしたいから"という理由だなんて。
それは私にも言えることで、長いすを振り返ると千枝ちゃんが手招きをしていて、思わず笑みが零れた。
楽しいと思える日が来るなんて、少しも思っていなかった。
「何笑ってるんだ?」
きょとんとして首を傾げる2人に、後半戦も頑張って!と背を押すと、おう、と自信満々ではないけれど、笑顔を見せてくれた。
そして私は、今か今かと首を長くしている彼女の元へ。当然、座れる場所といえば2人の間しかないわけで。
「お、お邪魔します」
とっても気まずい空気が流れているのは、気のせいでもなんでもないが、今は試合が優先。
集中するよう自分に言い聞かせると、試合はあっという間に第四クオーター。
今のとこ点差はダブルスコアギリギリ開いていて、八高は38点。せめて40はいきたいとこ。
頑張れ!と思わず拳を握っていたら、ブツブツと呪詛のような声が耳に入り、反射的に首を横に回して、後悔した。
「傍で見てたら益々ムカついてきた。このアタシがアンタみたいなダッさい子に負けたなんて」
海老原さんの呪詛は、睨まれた蛙状態で固まっている私を通り越し、千枝ちゃんに届く。
千枝ちゃんは意味が分からなかったんだろう、主要な言葉をピックアップしてオウム返しをしている。
とそれに痺れを切らしたように、海老原さんがヒステリック気味に声を荒げた。
「アタシは!アンタのせいで大迷惑被ってんのよ!」
「なら、アタシも言いたいことあんだけど!」
試合見ようよ!と2人をなだめる勇気もなく、腰掛けていたベンチからそっとフェードアウトし、横にそれた。
女の子同士のケンカは仲裁する側も危険に晒される。だから、手を出さない限りは止めなくても大丈夫。
自分を納得させて、シュートを放った一条君のボールがリバウンドするのと同じタイミングで、バチンと何かを叩いた音が聞こえて。
まさか、と思いながら振り返ると千枝ちゃんが海老原さんの頬目掛けて、手を振り切ったその後で。
ビンタされた海老原さんは、負けじと千枝ちゃんをぶって、千枝ちゃんが海老原さんをぶって・・・その繰り返し。
最後には、つかみ合いを始め髪も振り乱してもみくちゃになっていて。
「おい、やめろ!」
悠の声にようやく我に返り、2人を引き離すため間に割って入る。
「ちゃんと見とけ!一条の最後の試合かもしれないんだぞ!」
その言葉に海老原さんの力が弱まり、チャンスとばかりに力いっぱい2人を押すとあっさり離れた。
彼女は、未だにやる気満々の千枝ちゃんそっちのけで、コートへ振り返り食い入るように見つめている。
海老原さんの視線を追って振り返ると、一条くんがシュートを放った後で。
入れ!と、咄嗟に願ったがその必要はなかったよう、ボールは美しい弧を描いて、ネットを揺らす。
スコアが40と表示されると同時に、ホイッスルが鳴り練習試合は黒星で幕を閉じた。
私たちの知らないところで、一条くんはこの試合が終わったら、部活を引退することになっていたらしい。
が本人が"やめることをやめる"と宣言したことで、バスケ部は今までどおり廻っていけるよう。
千枝ちゃんがマネージャーにならないことに、一条君は肩を落として、それを見た海老原さんが顔を引き攣らせていたけど。
とても真剣な表情で、私もマネージャー続けて良いかな、と彼に尋ねたところを見れば、気持ちに変化があったことが伺える。
きっといいチームになるだろう、けどそれはまだ先の話しかもしれないけど。
愛屋でプチ打ち上げをして、集団になって帰る途中、鳴上さんと呼ばれつい悠と同時に振り返ると、海老原さんが私を見ていた。
自分のことじゃないと分かった悠は、先の集団に混じって先に歩いていってしまう。
試合途中に見せた"強い"イメージが拭えなくて、ちょっと距離を置きつつ何?と尋ねると、彼女は恥ずかしそうに。
「ごめんね・・・なんか、アンタのお兄ちゃん奪っちゃってて」
「えっと、話がみえないんだけど・・・・?」
「悠から聞いてないの?私たちがフリ、だってこと」
驚く彼女に、それは聞いてるよ、と答えなぜそれが悠を奪ったことに、というよりなぜそこで謝られるのか、分からない。
「アンタら双子ってベッタりでしょ?だから、嫌な想いさせたかもって」
自信なさげに、同時に申し訳なさそうに喋る海老原さんは、先ほど千枝ちゃんと、取っ組み合いをしていた人とは思えなくて。
ポカンとする私に、何よ!と照れ隠しを伴い睨む彼女に、思わず笑みを漏らすと。
「やっぱ、アンタって悠とそっくりね」
訳分かんないとこで、笑うとことかと不名誉なことを言われ、全然!と間髪いれずに告げると、ぷっと吹き出した。
「そーゆーとこが、似てるの」
納得のいかない私をよそに、彼女は鞄を漁り、何かを取り出した。
はい、と目の前に突きつけるので、流れで受け取り、噴出した。
プリクラだ。だがその内容が、笑いを誘わずにはいられないものだった。
"ゆうくんと初デート"と恋人定番の落書きは分かる。分かるけど、悠がすっごい顔をしてる。言葉にできないような、とにかくすっごい顔。
「ね。これ1枚頂戴?」
これは父さん母さん、ひいては陽介と千枝ちゃん、雪ちゃんに見せないと、ダメだ。面白すぎる!
肩を震わせて笑うを見ながら、アンタたちやっぱ変と笑った。
「ねぇ、名前で呼んでいい?」
ちょっと恥ずかしそうに言う彼女に、もちろんと頷いて、同じように名前で呼んでいいか尋ねようとして、下の名前を知らないことに気がついた。
「私海老原さんの名前、知らないや」
「あい、ひらがなで"あい"だから、悠と同じように"エビ"とか呼んだら許さないわよ」
片割れながら失礼なことを言うと呆れていると、あいが手にあったプリクラを引き抜いた。
「え、これくれるんじゃあ・・・」 「渡すよ、悠に。後でもらいなよ。私のケー番も教えてもらって、さ」
そう言い残して、あいは悠の隣に並んだ。
もしかしなくとも、新しい友だちができたらしい。
思わず笑みを漏らして、ふと空を見上げた。
雨上がりの夕暮れは、灰色と茜色がごちゃごちゃになって、キレイとは言いがたいけど、嫌いじゃない。
優しい夕暮れの日差しに目を細め、深呼吸をすると埃っぽい香りが鼻梁を擽って・・・これも嫌いじゃない。
稲羽は想像していた以上に、いい場所だ。
それはきっと、場所だけでなくて、一緒にいてくれる温かい人たちがいてこそ、だろう。
一番前を行く一条くんと長瀬くん
言い合いをする陽介と千枝ちゃん
顔を引き攣らせる悠と笑顔のあい
それを後ろで見て、ニヤケる私・・・・・・・・はちょっと気持ち悪いけど。
何を言えばいいのか、不思議なくすぐったい気持ちで心が満たされる。
きっとこういうのも"幸せ"っていうんだけろうけど、そんなことを考えてる自分が一番恥ずかしい!
誤魔化すように歩みを速め、悠たちを追い抜いて千枝ちゃんの隣に並ぶと、彼女がれ?と私の顔を除きこんだ。
「ちゃん、顔赤くない?」
「夕日のせいじゃないかな、うん!」