ZERO







試合の夜、夜半から明け方にかけて霧が出た。
こっちで霧が出るということは、向こうの霧が晴れること。
シャドウ達が凶暴化すると共に、マヨナカテレビも映る。
雪ちゃんはもう救出したし、何も映らないはずだけど、念には念をという意味でも、マヨナカテレビはチェックすべきだ。

結果として、マヨナカテレビには誰も映らなかった。
黄色味を帯びた砂嵐がずっと続くだけで、1分もしないうちに切れてしまった。
助けられたことには安堵できたけど、事件が終わったとは思えない。
根拠もないけど、証拠もない。勘という曖昧なものだけど・・・・まだ続く、そんな気がする。

「こっちで寝るだろ?」

そういえば悠の部屋でテレビを見てるんだった。
当然のように言われたことばに振り返ると、先にベットに潜り込んだ悠がいて。
誰も映らなかったのだから、何も見ないことも有り得る・・・・・が、やはり分からない。
シングルベットが更に狭くなるけど、これを見た後はひとりで眠る気にもなれないし。
お邪魔します。と会釈してみると、どーぞ?とからかう様な口調で、隣のスペースを叩いた。

「そういうのは、彼女にしなきゃ。私にしても効果はないよ」
「練習だと思って」

そんなやりとりをしながら、暖かさに安心し目を閉じた。





翌日、通学する私たちが校門に差し掛かった頃、赤いカーディガンを着た女子生徒が立っているのを見かける。
どこからどう見ても雪ちゃんで、私達に気づいた彼女が手を振っている。
おはようと挨拶を交わし、今日からまたよろしくね。とぎこちない笑顔を浮かべたが、ふとその顔に影がよぎった。

「なんか、皆にすごく迷惑かけちゃったよね。ごめんね・・・ううん、ありがとうだよね」

ポジティブに笑う雪ちゃんに、2人で顔を見合わせ、また彼女を見た。
4つの瞳に見つめられ戸惑いながら、事件の後、自分のこと冷静に考えられるようになったと。

「でも、なんか恥ずかしいな・・・あんなとこ見られちゃって」
「あれが天城の全てじゃないだろ」
「うん。そう思いたい」

優しく笑みを浮かべる悠と照れたような笑みを浮かべる雪ちゃん。・・・これって、もしかしなくてもいい雰囲気なんじゃ?
ここは気を使ってフェードアウトでも・・・・しようと横にはけようとしたら服の裾を掴まれ、リードでつながれた犬のようにピインと引き戻された。
何するのとばかりに悠の顔をチラリと見あげていると、雪子ー!と元気たっぷりの声がし、彼女も反応してまた後で、と行ってしまう。
あーあ、と小さくため息をついたら眉間に皺を寄せられ、ため息をつき返された。
何?何でもない。何でもないことないでしょ?とやりとりしながら教室に入ると、先に登校していた陽介がよっと手を上げた。
試合で筋肉痛だと、顔を顰める陽介に苦笑いをしていると千枝ちゃんと雪ちゃんが入ってくる。
仲のいいメンバーが集中した席だな、と一番後ろの席で眺めながら頬を緩めた。

そして放課後、何故か私達はジュネスのフードコートにいた。
私を含めた、女の子だけの前には何故か熱した鉄板の上でジュウジュウおいしそうな音を立てる名物"ビフテキ"が。
今日から始めたばっかなんだよなぁと安心する陽介に、千枝ちゃんがフィレじゃないと文句を言うものの、"肉"だからいいと笑う。
雪ちゃんはお肉自体が苦手なようで、恨めしげに鉄板を見ているが、悔しいから食べる。とボソリと呟いた。

何故こんな状況が生まれたかというと、彼女達が楽しみにしていたカップ麺を味見と称して、男子2人が完食してしまったからで。
食べ物の恨みは怖いというか・・・雪ちゃんが空になったカップを見つめ、おあげと悲しげに呟いたのは忘れられない。
ちなみに、なぜ私の前にもビクテキがあるかというと、味見をできなかったから。
とにかくカップ麺を心待ちにしていた2人には、完食した彼らの行為が許しがたいもののようで、ちょっとでも懲らしめたいみたい。
2人の手前遠慮したものの、彼女達が許さず結局奢ってもらった。実物が出てしまったらしょうがないから、食べるけど。

「でさ、さっきの話なんだけど、結局犯人ってどんなヤツだろ?」

カップ麺事件、もとい雪ちゃんの証言によればチャイムが鳴って玄関にでて・・・までしか憶えていないらしい。
気づけばあのお城の中にいたのだと。堂々と玄関からやってくる犯人はいっそのこと清々しくあるが、だからこそやっかいだ。
警察の調べもまったく進んでいないことから、町の人間の仕業という可能性も捨てきれない。
小さく閉鎖的な町は"外部の人間"には過剰なまでに敏感になる。特に保守的なお年寄りなんかは。
もし、犯人が稲羽市の人間じゃないなら、手がかりを血眼になって集めている警察の目に、止まらないわけがない。

「山野アナを見れば、動機は恨みっぽいよな。不倫相手の奥さんとか」
「でも柊美みすずって、アリバイがっちりでしょ?旦那さんとも前から別居中らしいし」

やけに詳しいな、と千枝ちゃんに突っ込みながら、二件目の事件小西先輩のこと例にあげた。

「一件目の死体発見者だった。犯人が同じだとすれば、先輩が狙われたのは・・・」
「口封じ、だな」
「先輩が犯人にとって不都合な証拠を、見つけちゃったとかで」
「でも、犯人はテレビに入れただけだよね?」

雪ちゃんが、冷静に事実を口にした。確かに"入れた"だけじゃ、殺した証拠にならない。
まず、まともに相手にされないのは確実だし、下手をすれば精神鑑定に、なんて言われかねない。
それなんだよなぁと陽介が天を仰ぐと、その向こうに見慣れた若い刑事の姿が。
何かを探しているようで、あちこちに視線をやっている。
仕事?でもこんな時間にフードコートに?おかしいと思いつつ、声をかけようとしたとき。

「お。新メニュー発見伝!」

ダジャレに声をかける気力も失って、苦笑いしていると足立さんが私達に気づいた。
気まずそうにしながらも、見つけてしまった手前、無視するわけにもいかないということだろう。
しぶしぶ、といふ風にやってきてヘラリとした笑みを浮かべた。

「こんにちわ。ちゃんと・・・・悠くん、だよね」

それとお友だち、と付け加え足立さんが意味あり気な視線を私に向けた。
友だちができてよかったね、とでも言いたいのだろうか。とりあえず笑みを浮かべておくと、千枝ちゃんが何のためらいもなく。

「小西先輩は口封じで殺されたんですか?」

と直球で尋ねたのがいけなかったのか、彼は、私達が推測したようなことをペラペラ喋り始めた。
それはもう、得意げに。

「あ、足立さん。それ以上はマズいんじゃあ・・・」
「い、今の忘れて!犯人は警察が必ず捕まえるから、任せて!」

顔を青くし我に返った足立さんは"もっともらしいこと"を言ってそそくさと帰っていた。
なんというか、足立さんにはサボり癖があって、ジュネスがそのサボリ場の主な場所になっているらしい。
警察は当てには出来ないな、と素直な感想を漏らす悠に皆で頷いていると、うわっしまったぁ!と千枝ちゃんが叫んだ。

「肉がげんなりしてる?!」

げんなりって何だろうと思いながら、テーブルに向き直ると確かに鉄板が冷めてしまっている。
肉、肉煩ぇよとビフテキと同じようにげんなりする陽介をよそに、早く食べよう!と私達にも勧め、食べ始めた。
ガツガツという効果音がぴったり合いそうな食べ方に、顔を引き攣らせていた陽介は、千枝ちゃんから視線を逸らし、悠に向き直る。

「クマんとこ行ってみようぜ?」
「そうだな。何か変わったことがないか、聞いておきたいし」

そうなると私はここでお留守番、か。
また眠くなるのもあまり嬉しくない。食べた後に寝ると、胃がもたれて仕方ないから。
そういう理由で千枝ちゃんに残りのビフテキを差し出すと、それはもう盛大に喜んでくれた。
ありがとう、ありがとう!と頬袋を肉で満たしたまま喋り、陽介に汚い!と注意され、また口論になって。

ちゃん、あまり真剣に相手してると疲れるよ」

さり気なく毒を吐いた雪ちゃんに、そうだね、と苦笑いを浮かべると、雪ちゃんがナイフとフォークを置いた。

「あのね、ちゃん。一つ聞きたいことがあるんだけど」

黒曜石のような瞳が向けられ、綺麗だなとまったく関係ないことを考えつつ、頷くと雪ちゃんが口を開いた。

「お城にいたとき、ちゃんはあの場所にはいなかった・・・・のよね?」

詳しいことは話ていないが、私がテレビの中に入れなくても、外から状況を把握できることは説明済み。
頷くと、彼女は困ったように視線を泳がせ始めた。

「でもね、なんていうか・・・・その、私と私のシャドウのこと、見てなかった?」

けれどその状況を夢のように見ることは、まだ説明していない。
困惑する私に、雪ちゃんは言葉を吟味するように、ゆっくりと喋り始めた。

「最初に気づいたのは、私のシャドウ・・・誰かが見てる、って嫌そうな顔をしてて」
「見てる?嫌そう?」

私より先に反応したのは悠。どういう意味だと言わんばかりに、先を促し雪ちゃんが答える。

「とにかく一点ばかり睨むものだから、私も同じほうを向いたの。そうしたらちゃんが立ってたの。パジャマ姿の」
「パジャマ・・・・?」
「色まで見えなかったけど、ボーダーの長袖と長ズボンだった、部屋着って感じの・・・・」

思わず悠と私が顔を見合わせた。雪ちゃんが口にした格好は、毎晩私が寝る時に着用してるもの。

「はっきりとじゃないの、ぼんやり・・・・砂嵐がかかったような」
「・・・・私はどうしたの?何か言った?それとも、見てるだけ?雪ちゃんのシャドウは」

肩を強い力で掴まれ、はっと我に返ると立ち上がり、雪ちゃんの方に身を乗り出していて。
悠が落ち着けとばかりに、イスを促すから大きく深呼吸をして、腰を下ろした。
そうだ、焦ったって答えが出るわけでも、逃げるわけでもないし、第一雪ちゃんにプレッシャーを与えてしまっては、元も子もない。
彼女は全てを話そうとしてくれているのだから。

「ごめんね雪ちゃん、一つずつ教えてくれる?」
「よく憶えてないの・・・・・ごめんなさい。でもシャドウが何か・・・・確か、諦めろみたいなことを」
「雪ちゃんの逆ナンが、マヨナカテレビに映った日だ」

逆ナンはやめない?と顔を引き攣らせる彼女をよそに、ここ数日のことを振り返る。
雪ちゃんがテレビに入れられてから、彼女―厳密に言えば彼女のシャドウ―に話しかけられたのは、一度きり。
悠たちが雪ちゃんを探しに行った時も、話しかけられることはなかった。

「諦めちゃえばいいじゃない?どうせ、見てるだけなんだから・・・・・そういうこと、言ってなかった?」

私の言葉に、雪ちゃんははっとし、何度か頷いてみせた。

「完全一致かどうか分からないけど、ほぼそういう言葉だったと思う」
「千枝ちゃん、陽介」

雪ちゃんの言葉を受け、確認したいことができたので、いがみ合っている2人に声をかけた。
あ゛ん?!とやさぐれたヤンキーのように、若干強面で振り返る2人に身をひきつつ、口を開く。

「テレビに入ったとき・・・・自分のシャドウと向き合ったときに、その・・・私の声が聞こえたり、見えたりしなかった?」
「ん?待て待て、話がみえない」

慌てる陽介に、それもそうだと私たちの会話に加わっていなかった2人に、掻い摘んで説明すると、2人で顔をあわせうーん、と唸り始めた。

「悪ぃ、全然思い出せねぇわ」
「あたしも。自分のことで精一杯だったし、余裕なかったっていうか・・・・ごめんね、ちゃん」

それもそうだとかぶりを振ると、考え込んでいた悠が、なかったと断言するように口を開いた。

「テレビに入るときは皆一緒だったし、俺2人のシャドウが出るのも見てる。気になることもあって、ちょっと色々見てたんだ」
「気になること?」
「あの世界は常識を超えてる。だから、がテレビの外で中の状況を見てるなら、何かあるかもしれない・・・・だろ?」

賭けのような可能性の話だけどな、と悠は肩を竦める。

「それにクマが言ってた、誰かが見てるって」
「あ・・・・確かに、クマくん言ってたね」
「優しい感じ、なんて言ってたなあ。アイツ言うことデタラメだし、気にしてなかったけど」

陽介がため息をつくと、悠が全員を見渡しながら話を切り出した。

「仮定の話しなんだが・・・・俺たち戦いも慣れてきて、雑魚なら楽に倒せるようになっただろ?」
「確かに、最初に比べたら楽になってんな。コツが分かったっつーか・・・・そうだ里中、お前その蹴り人間に繰り出すなよ?死ぬから」
「ふーん?そんなに私の靴跡、欲しいんだ?」

拳をプルプルと震わせて、ニッコリ笑う千枝ちゃんは可愛いのに、額には青筋が走っていて、恐ろしい。
陽介は失言と気づいて、血の気の引いた顔に貼り付けたような笑みを浮かべ、冗談だから!と私の後ろに隠れる。
そんな2人を雪ちゃんが宥めていると、陽介が何かを思いついたように、あっと声を上げた。

「レベルアップしてるって言いたいのか?」

陽介の言葉に頷いて、悠は私に振り返った。

「天城を助けに行ったとき、俺たちの声がはっきり聞こえた。そう言ってたよな?」
「うん。今まではシャドウの声しか聞き取れなかったんだけど、皆の喋ってる声も聞こえた」

ただシャドウが暴走する直前まで、だけど。

「そして天城がを見てる」
「それが何と繋がって・・・・・・・まさか、私も?」
「まだ断言できないけど、多分能力があがってる」

今まで聞こえなかった音が、まさか姿が見えるとは思ってなかったけど・・・・やれることが増えた。
確かに、悠が言うことも一理ある。けど、どうして?

「そこまでは分からない・・・・・で、ソレも含めて中の様子を確かめてくる」

話が大分逸れてしまったけど、中の様子を探りに行く途中だった。
本題を思い出し、私を除いた皆がそぞろに立ち上がる。
いってらっしゃいと手を振る私に見送られていたはずなのに、陽介が一人振り返る。

「笑っとけ」
「はい?」
「いいから、笑顔!」

そう言われて咄嗟に作った笑顔は、酷かったらしく目の前の彼はぷっと吹き出した。

「ヒデー顔!」
「無茶振りするからでしょ・・・・」

意図が見えなくて、不満げな顔をする私をよそに考え込んだと思ったら、はっと何かを思いついたように顔を上げた。

「ふとんがふっとんだ!」
「・・・・・・え?」
「鹿が叱られた!」
「・・・・・あの」
「虫は無視しろ!」
「よーすけ・・・・さん?」
「アルミカンの上にあるみかん!」

間髪あけずにポンポンダジャレが出るのは凄いけど、でもどうしろと?
唖然とする私を正気に戻したのは、少しはなれた場所で雪ちゃんがケラケラと笑っている声だった。
お腹を抱えて呼吸困難に陥りそうなほど、ヒーヒー言う彼女を千枝ちゃんが介抱している。
おしとやかな雪ちゃんが、豹変したことに傍にいた悠も、私も、そして陽介もぎょっとしたものの、逸早く我に返った陽介はダジャレを言い続けている。

「チェロ弾けるよ、チェロっとね!・・・・つーか、まだだめか?流石にネタ切れ・・・・お!ネタがないからもうねたろう」

あ、落ちた。陽介がボソッと呟き、噴出してしまった。
目を瞬かせるしかなかった寒いギャグも、今思い返すとじわじわと笑えてきて。

「す、凄いね陽介。立派な一芸だよ」
「おっし。その笑顔な」

どういう意味か聞こうと、顔を上げると陽介が満面の笑みを浮かべた。

「やっぱは、笑ってんのがいいと思う」

太陽のような笑顔っていうのは、きっと目の前の彼のような笑顔を言うに違いない。
日に透けた亜麻色の髪がキラキラして、眩しくて、でも温かい。

「・・・うん。あ、あり・・・・が、とう」

綺麗だね、と思わず口走りそうになったのを止めた結果、どもって感謝の意を述べてしまい、恥ずかしさに頬を赤らんだ。
陽介も何か言ってくれればいいのに、おう、とだけしか言わなくて、それが余計に気まずくて顔を見ることができない。
しばらく沈黙が降りたのを突破したのは、千枝ちゃんの微かに、でも確かに聞こえた一言。

「うっわあ、生中学生日記だ」
「うっせー外野!」

憤慨しながら駆けていく陽介に笑みを漏らし、その背中にもう一度ありがとうを告げた。





その数分後、軽い眠気に襲われそろそろ皆が中に入ってる時かな、と思っていると突然視界が不鮮明になる。
眠気も抗えないような強いものではなく、眠りから目覚める間際のような、ぼんやりとした感覚だった。
霧なんて出ていなかったはずなのに、それはどんどん濃くなり、あの毒々しい床が薄っすらと見え始め、皆があっちに入ったのだと理解できた。

いつものように、寝入ってしまうほど体の自由が奪われておらず、傍から見れば起きたままだ。その上、少しだけなら体も動く。
けれどテレビの中を見るときの、あの不思議な感覚はそのままだ。
視界は相変わらず不鮮明だが、シルエットで誰か判断できるし、話し声も聞こえる。
能力が上がっている、という片割れの仮説は本当かもしれない。

クマさんが雪ちゃんに探索用のメガネを渡した後、遊びで作ったという宴会等で使われそうな、鼻メガネを見つけそれをかけた。
嬉しそうにする彼女に、悠が似合うぞと微笑ましそうに言い、次は千枝ちゃんにメガネを渡した。
それを見た雪ちゃんは先ほどの、陽介のダジャレを聞いた後のように、お腹を抱えてヒーヒー言い出して。
ひとしきり笑い終えてから、雪ちゃんが入った後、こっちの世界に何の変わりもないことをクマさんが教えてくれる。

「そういえば、女の子が見てるクマ」
「女の子が見てる?」

悠の問いかけに、クマさんは深く頷いて、あの辺にいる気がするクマと私の方を指差した。
驚いたけど、やはりと思うところもあり、次に挨拶でもしようと口を開いたものの、やはり声はでなかった。

「すごく優しい感じがするクマ。それにセンセイに似てる気が・・・・・」
「ってことは、やっぱりちゃん?」

一斉に見つめられ、居心地の悪さを感じるがあっちからは見えてない。
マジックミラーを通しているような感覚が面白くて、は小さく笑みを漏らした。


結論として、能力は上がっていて、もしかしたらあっちを見ながら、現実で動けるようにもなる・・・・可能性もあるってこと。
そうならないこと、これ以上事件が起こらないに越したことはないのだけれど。
眠気が去り、意識もはっきりしたところで空を仰ぎ見た。嫌味なほどどこまでも続く、蒼穹を。
日の光に目が眩み、は光を手で遮断しつつ、そっと瞼を閉じた。